こんにちは。
たくゆう耳鼻咽喉科クリニックの黒田です。
世界中で新型コロナウイルスの感染が広がり、パンデミック状態が宣言されています。未知のウイルスに対する検査方法も治療法も確立しておらず、無症状の感染者が周囲に感染を広げている様です。
鼻やのどからの飛沫物で感染することが分かってきており、鼻やのどを診察するのが仕事である耳鼻咽喉科の医師としては、自分自身が感染者とならないか、感染の媒介者にならないか、細心の注意をはらっています。診察や、カルテ書きを含めて、何らか行為をしたらすぐに手指消毒、をこれまで以上に意識的に行うようにしています。
感染のリスクを考えて、「鼻やのどの診察はしません」「鼻やのどの検査はしません」という耳鼻咽喉科もあるようです。当院は、厚労省や保健所などの指針に従って、診療を続けていく方針です。
さて、そろそろ新学期も始まり、小学校では5~6月にかけて、耳鼻科検診が始まります。
該当する学年のお子さんがいるご家庭では、お子さんの日々の状況を記録する問診票が配られます。
また、検診の際に耳垢で鼓膜が見えない状態だと、後日の耳鼻科受診が必要になります。できるだけ、検診を受ける前に耳垢を取り除いておきましょう。耳の穴の見えるところにある物はご家庭で、耳の穴の内部にあって見えない物は耳鼻咽喉科専門医を受診して、耳の中のお掃除をしておいてください。
3月になり、今年も花粉症が本格化してきました。
例年よりも早く、3月初めには「ハンノキの花粉症」が始まっており、4月からは、「シラカバの花粉症」が始まります。シラカバ花粉症では、鼻水、鼻づまり、くしゃみ、目のかゆみ、頭痛などの症状が強く出る傾向があります。
鼻風邪と花粉症を区別することは重要です。
花粉症の場合には、風邪薬では効果が無く、また、花粉症の程度によって適切な薬剤を選択しなければ、薬を内服しても十分な効果が得られないことがあります。
アレルギー性鼻炎かどうかを調べて、実際に鼻を見てもらってから処方を受けることが大事な理由は、ここにあります。
それでは、今年の2月に発表されていた「シラカバ花粉症」の飛散予測がどうだったか、見てみましょう。
(日本気象協会のHPより)
例年比では、130%と、いつもよりやや多い程度です。
(日本気象協会のHPより)
しかし、昨年との比較では、300%(!)です。
そして、実際の飛散量は以下の通りです。
(北海道立衛生研究所のHPより)
まだ、4月の「シラカバ」は飛散していませんので、3月の花粉症である「ハンノキ」の飛散状況を見ています
(「シラカバ花粉」の飛散状況については、4月に入ってから報告が出てくると思います)。
例年以上にたくさんの花粉が、しかも3月初めから一気に飛散していることが分かります。
今年は、ご自身が「ハンノキ」花粉症であることをご存知の方は、3月に入るのと同時に、鼻水・くしゃみ・目のかゆみがつらくて、たくさん来院されています。
「ハンノキ」花粉症の方は、だいたいが「シラカバ」花粉症も持っているため、来院時には「今年はシラカバの花粉の飛散量が、昨年の3倍と予想されていますから、4~5月も続けて治療しましょうね」と声かけをするようにしています。
自分が「ハンノキ」「シラカバ」の花粉症だと分かっている方は、この時期はしっかりと治療されています。
但し、昨年は「シラカバ」の飛散量が予想に反して少なめでした。なので、全く治療をしなかったけれども、鼻の調子は良かった、という方もたくさんいらっしゃると思います。しかし、今年はかなり状況が異なるようです。
以上より、
「シラカバ花粉症」の診断がついていて、昨年は無症状で過ごせた方でも、今年は鼻水・鼻づまり・くしゃみ・目のかゆみがひどくなる人が多いのではないかと、予想しています。
「シラカバ花粉症」の方は、今年はひどくならないうちに、耳鼻咽喉科専門医へご相談ください。
以上のように、「自分が花粉症を持っているか」を知っておくことは重要で、正しい治療を受ける近道になります。
一度調べてしまえば、今後毎年の鼻症状について、自己診断することも可能になるので、「花粉症の時期が来たので、今年も来院しました。いつものお薬をお願いします」とおっしゃって来院する患者さんもたくさんいます。
花粉症のときには、気道の過敏性が亢進して咳も出やすく、「アトピー咳嗽」と言われるような一度始まるとなかなか止まらない咳を合併することもあります。そして、鼻水が多くなると後鼻漏も増えるため、鼻汁による咳を伴って、さらに症状は悪化することがあります。
「鼻かぜではなく花粉症かも」、「鼻とのどの風邪ではなく、花粉症に伴う咳かも」と考えてみても良いかもしれません。
咳がなかなか止まらない場合には、耳鼻咽喉科専門医でアレルギーの検査を受けていただき、必要があればアレルギーの治療を開始することをお勧めいたします。
また、小児の場合には、鼻水の出る状態が長く続くと「中耳炎」を合併することが多いため、しっかりと耳垢を取り除いて鼓膜を確認することが重要です。中耳炎は軽症であれば薬を飲むことで改善しますが、重症化してしまうと、激しい耳痛、発熱、さらには鼓膜が破れて耳だれが出ることがあります。重症化して鼓膜がぱんぱんに腫れている場合には、鼓膜切開術が必要になることがあります。
小さな子供は、耳の不快感があっても保護者に訴えないでいることが多いので、「鼻水が出ているし、もしかしたら中耳炎になっていないかな?」と考えてあげることが大事です。
春の花粉症の時期は、年度替わりの新学期の時期と重なります。なので、「この春から保育園に通い始めたら、鼻水が止まらなくなった」「鼻水が出ながら幼稚園に通っていたけれど、『発熱しているので』とお迎えに来るよう言われた」という相談がたくさんあります。中耳炎を合併していることが少なくありませんので、耳鼻咽喉科専門医を受診することをお勧めいたします。
そして、小児、成人を問わず、「アレルギー症状」と決めつけずに「副鼻腔炎」の有無を調べることも重要です。小児の場合、アレルギー性鼻炎患者の約50%が副鼻腔に異常があり、逆に副鼻腔炎患者の25~75%にアレルギー性鼻炎が認められると言われています。
2つの病気を合併している場合には、両方の治療が必要なことが少なくありません。
副鼻腔炎は中耳炎を難治化させる原因としても知られており、長引く中耳炎では副鼻腔炎の有無を確認することが重要です。
この時期の「鼻水、鼻づまり、くしゃみ・目のかゆみ」などの症状については、耳鼻咽喉科専門医の受診をお勧めいたします。