【新型コロナ感染症が増えて、インフルエンザが既に流行入りしています】

 こんにちは。院長の黒田です。

 
 「新型コロナウイルス感染症」が、令和5年5月8日から、従来の「2類感染症」から「5類」に変更されました。

これに伴って、社会活動の制限が大幅に緩和されて、コロナ禍前のように、各種の行事・イベントの再開、海外からの旅行者の増大、マスク装着の自由化、公衆トイレでのハンドドライヤーの再開など、まるで新型コロナ感染症が根絶したかのように、身の回りで大きな変化が起きていると思います。

 但し、新型コロナ感染症の感染者は、4月以降もゆっくりと増えてきており、最近はさらにその数が増えている印象です。 厚生労働省によりますと、9月3日までの1週間に全国およそ5000の医療機関から報告された新型コロナの患者数は、前の週から7497人増えて10万1289人となりました。

下記は、新型コロナウイルス感染症の定点当たり報告数です。 

 

 内閣官房のHPより(上記表は、クリックで拡大します)

 

 新型コロナウイルスの全国の感染状況は、9月10日までの1週間では1つの医療機関当たりの平均の患者数が20.19人で。厚生労働省は「緩やかな増加傾向が続いていて、引き続き感染対策を徹底してほしい」としています。

 下記のグラフを見ていただくと分かりますが、昨年末12月~1月と同数に近づいていることが分かります。また、5類感染症への変更に伴い、医療機関を受診せずに家庭で自己検査を行っている人や、検査そのものを受けずに風邪と考えて登校・出勤している人も多数いると思われますので、実数はもっと多いと推定されます。

 (新型コロナウイルス感染者数)

(NHK HPより)

 

 また、5類移行に伴って、マスク着用は個人の判断となりましたが、下記の通り、厚労省は医療機関を受診する際にはマスクの着用するように周知しています。

 当院でも、「乳幼児・小児や、診察を受けない付き添いの場合でも、マスクの着用」をお願いしております。

 

「2歳以下のマスク着用は危険だから、着用しなくて良い」と主張される保護者の方もいらっしゃいますが、それは医療機関や高齢者施設の訪問をせずに、公園で遊んだり、保育園・幼稚園に登園したり、通常の家庭生活を送る際に該当することです(医療機関などへ行かないのならば、マスク着用は不要です)。

           

 

 当院には、抗がん剤を内服して闘病している方や、免疫抑制剤を投与中で感染すると重症化のリスクがある方、高齢者で抵抗力の低い方、睡眠時無呼吸症候群の方、呼吸器・循環器・消化器など他院で基礎疾患を治療中の方、障害のために車椅子で寝たきりで自身では一切体を動かせない方、人工透析を受けていて免疫力が低い方、妊婦さん、など、本当に色々な患者さんが来院されています。

   

その方々は、新型コロナ感染症に罹患すると、重症化しやすく、入院加療が必要になる可能性が高く、感染症に対して非常に気を使っていらっしゃいます。実際に、新型コロナ感染症での入院者数は、現在でも相当数いらっしゃいます。

     

 

 一方、乳幼児・小児では、感染者数は依然として多いのですが、低年齢層では症状が顕在化しにくく、発熱も全くなく(元々の基礎体温も37度前後なので、微熱があるのか分かりにくいです)、咳、鼻水などの感冒症状だけにも関わらず、それがコロナ感染症であることが稀ではありません。

 

 また、当院はコロナ禍前に建築されたその構造上、風邪症状の方と、そうでは無い方の玄関・待合室・診察室は別れておらず、全く同一です(小児科以外のほとんどの医療機関が、そのようになっていると思います)。

 つまり、新型コロナ感染をしている全く無症状(あるいは発熱の無い風邪症状のみ)の乳幼児・小児が、知らないうちに待合室で、誰かに感染させてしまう可能性があるのです。

「乳幼児・小児自身は、新型コロナに感染しても症状が軽いから」、とはまた別の意味の話なのです。

 

 

 ですので、「発熱も無いし、新型コロナ感染症であるはずが無く、風邪症状なんだから、マスクはしない。診察して薬を出してください」、「付き添いの子供は乳幼児なので、マスクは絶対にしない」という保護者の方が、稀にいらっしゃいますが、当院では上記や厚労省の方針を踏まえて、

「全ての方に来院者(付き添い者を含む)に、マスク着用」をお願いしております。

どうしても同意いただけない場合には、マスク着用は不要で良いという他の医療機関の受診をお願いしております。

 

マスク着用に関しては、下記の厚労省のポスターをご参照ください。

(厚労省のHPより。クリックで拡大します)

 

 

 

 さて、話題を変えて、「インフルエンザ感染症の現状」をお伝えいたします。

今年は、季節外れのインフルエンザが流行し、昨シーズンの冬から1年を通して流行が続いており、苫小牧市でも、夏であるにもかかわらず、小中学校では学級閉鎖・学年閉鎖・学校閉鎖となっています。

 

 国立感染症研究所によりますと、9月10日までの1週間に全国およそ5000か所の医療機関から報告されたインフルエンザの患者数は2万2111人で前の週から9473人増えました。1医療機関あたりでは4.48人で前の週から1.92人増えています(下記のグラフを参照ください)。


 また、このデータを元に推計されるこの1週間の全国の患者数はおよそ15万1000人で、地域ごとでは、全国の44の都道府県で前の週より増加したということです。

(国立感染研究所HPより。クリックで拡大します)

 

 ちなみに、この数値が「1」を上回ると、「インフルエンザの流行入り」「10」を上回ると「インフルエンザ注意報」、「30」を上回ると「インフルエンザ警報」が、都道府県から発令されます。 

下記のグラフを見ると、過去10年の流行状況と比べて、3~5ヶ月ほど早く基準値を超えていることが分かります。

 

(国立感染研究所HPより。クリックで拡大します)

 

 この季節外れのインフルエンザの流行の原因ですが、識者によると、

「新型コロナとの同時に検査できるキットが普及し、インフルエンザが以前より見つかりやすくなったことも関係していると考えられるが、コロナ対策でここ数年、流行が抑えられ、免疫を持たない人が多いことが影響しているとみられる。今の時期、冬のシーズンのように爆発的に患者が増加するリスクは低いと考えているが、流行状況に注意する必要がある。」
「コロナだけでなくインフルエンザも流行し、私たちの周りにウイルスが潜んでいる。かぜの症状が見られたら、コロナやインフルエンザに感染しているかもしれないという意識をもって、無理して外出せず、自宅療養することが大事だ。症状が重くなって不安がある人は、医療機関を受診して早めの診断や治療を受けることが大事だ」

とのことです。

 

 東京都が9月14日に公表したインフルエンザの都内の感染者数によりますと、インフルエンザの感染者数は9月10日までの1週間に1医療機関あたり5.95人と、統計を取り始めた1999年以降、この時期としては過去最多となりました。

 季節外れの9月にインフルエンザが流行しており、しかも感染者のほとんどが小児や若年者で、学級閉鎖・学年閉鎖の原因になっているようです。

(NHK HPより。クリックで拡大します)

 

 東京都は9/21、インフルエンザの患者報告数について、「流行注意報基準(10.0人)」を超えたと発表して、「今後さらに流行が拡大する可能性がある」としています。

(東京都感染症速報より。クリックで拡大します)

 

下記は、埼玉県庁の発表ですが、やはり季節外れにインフルエンザが流行していることが分かります。

(埼玉県庁のHPより。クリックで拡大します)

 

また、愛知県も県内のインフルエンザの発生状況について、下記グラフのように、県内のインフルエンザ患者の定点医療機関当たりの報告数が、「4.89」となり、9月14日付けで、「インフルエンザの流行入り」を発表しています。

(愛知県HPより。クリックで拡大します)

 

 

以上より、9月時点で既に、新型コロナ感染症の増加と、インフルエンザの非常に早期からの流行が同時に起きていることが分かります。以下は東京都の両感染症の患者報告数ですが、9月の時点で既に非常に感染者数が多く、これから本格的な冬に向かうにつれて、「新型コロナ感染症」、「インフルエンザ感染症」の両者に注意が必要と考えられます。

(東京新聞HPより。クリックで拡大します)

 

 以上より、今年の冬も、「インフルエンザ」と「新型コロナ」が同時流行して、いわゆる『フルロナ』という重複感染が生じることが懸念されています。

 年末でどうしても仕事を休めない方、感染しても薬が飲めない妊婦さん、受験生のいる家庭、基礎疾患のある方、ご高齢者、乳幼児・小児、などは、是非とも、予防接種を受けていただくことをお勧めいたします。

 当院では、上記の様な例年とは異なる状況を踏まえて、今年のインフルエンザワクチン接種を早めに開始するために、9月中から既に予約を受け付けており、既に100名近い方が予約なさっております。

 インフルエンザワクチンの接種を考えていらっしゃる方は、早めに予約をされることをお勧めいたします。