【平成30年度のインフルエンザ予防接種について】

 こんにちは。院長の黒田です。
 
 このたびの「北海道胆振東部地震」に際し、被災された方々には心よりお見舞い申し上げます。当院に通院中の患者さんにも、避難所での生活を余儀なくされている方がいらっしゃいます。1ヶ月が経過した現在もなお、余震が続いていますが、皆様の安全と被災地の1日も早い復興を心よりお祈り申し上げます。
 この地域では、地震の影響で体調を崩されている方がたくさんいらっしゃいますが、当院へは「めまい」「鼻水・くしゃみ」で来院されるかたが増えています。心身のストレスが原因で生じる一過性めまいの方がほとんどですが、内耳が原因のめまいの方も増えています。また、地震の揺れや、家財の整理などで、ハウスダストに暴露された方は、アレルギー性鼻炎を発症されています。
 また、次々にやって来る台風ですが、気圧の変化に伴って、「めまい」を発症することが少なくありません。
 季節の変わり目で気温も下がっていきますので、体調には気をつけてお過ごし下さい。

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 さて、今年もインフルエンザの予防接種の時期になりました。
 昨年は、インフルエンザワクチンの供給量が不足して、「接種を希望しても医療機関にワクチンの在庫が無く、受けられなかった」、「1回目の接種を受けたのに、2回目が受けられなかった」という方がたくさんいました。
 今年のワクチンの情報をお伝えいたします。
 

【今年のワクチンの株】

今年は、A2株B2株の計4価のうち、2価が変更になっています。

・ 昨年、平成29年度(2017/2018シーズン)
    A/Singapore(シンガポール)/GP1908/2015(IVR-180)(H1N1)pdm09
    A/Hong Kong(香港) /4801/2014(X-263)(H3N2)
    B/Phuket(プーケット)/3073/2013(山形系統)
    B/Texas(テキサス)/2/2013(ビクトリア系統)

・ 今年、平成30年度(2018/2019シーズン)
    A/Singapore(シンガポール)/GP1908/2015(IVR-180)(H1N1)pdm09
    A/Singapore(シンガポール)/INFIMH-16-0019/2016(IVR-186)(H3N2) ←変更
    B/Phuket(プーケット)/3073/2013(山形系統)
    B/Maryland(メリーランド)/15/2016(NYMC BX-69A)(ビクトリア系統) ←変更

この組み合わせは、厚生労働省が流行予測を行って5~6月に公布され、各製薬メーカーは7月にはその発表と全く同じ組み合わせのワクチンを製造し始めます。A型の株のうち、H1N1型は数年間同じで変わらないのに対し、H3N2型の株は、ほぼ毎年変わります。

このH3N2型が厄介で、流行が予想されて選定されたウイルス株が鶏卵の中でうまく発育せずに、別な型のウイルスが増殖してしまって、本来作るべきワクチンが製造できなくなりやすいのです。これを『鶏卵(けいらん)の馴化(じゅんか)』といいます。

昨年は、この『馴化(じゅんか)』のために、目的としていたワクチンが作成できず、急遽ウイルス株を変更して作成をやり直したため、製造が間に合わず、全国的にワクチンが足りなくなってしまったのです。鶏卵が材料である限り、目的とするワクチンが作れない問題は解決しません。現在、鶏卵を材料としないワクチンの開発を試みているメーカーがあり、将来的に実用化されれば、ウイルス株の整合性・ワクチン不足問題とも解決されると見込まれています。
(下図はクリックで拡大します)

馴化
 


【接種の年齢と回数】

(1) 6か月以上3歳未満  1回0.25ml 2回接種
(2) 3歳以上13歳未満   1回0.5ml   2回接種
(3) 13歳以上        1回0.5ml   原則として1回接種(特別な事情があれば2回接種)
      
※ 生後0~6ヵ月まではワクチンを接種しても抗体が増えず、有効性が確認されていないため、
  ワクチン接種の対象となっていません(接種希望があっても接種できません)
※ 1回目の接種時に12歳で2回目の接種時に13歳になっていた場合でも、12歳として考えて
  2回目の接種を受けて構いません。
※ 2回接種する場合は、腕の腫れを減らすため、左右交互に打つことが勧められています。
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【ワクチン接種のおすすめ時期】
 インフルエンザワクチンは接種後2週目から抗体が上昇し始めて1ヵ月でピークに達し、その効果は約5ヵ月間持続します。2回接種が必要な場合、1回目の接種で抗体がピークに達している1か月後に追加接種した場合に最も抗体が上昇します。2回目の接種はこの頃に受けるのがよいでしょう(一般的には、接種間隔は2~4週とされています)。以下は当院として推奨するワクチン接種スケジュールの例です。
 遅くとも12月上旬までには最後の接種を済ませておくことをお勧めいたします。

(2回接種の例)
1回目 10月下旬~11月上旬
          ↓(4週後)
2回目 11月下旬~12月上旬

(1回接種の例)
  11月上旬~12月上旬

 ワクチン接種後の効果の持続期間ですが、一般的には、2回の接種後1か月で77%が有効予防水準に達し、接種後3ヶ月で有効抗体水準は約78.8%と維持されていますが、接種後5ヶ月では約50.8%まで減少すると言われています。
つまり、最後の接種が11月上旬の方は、2月上旬までは約80%、4月上旬までは50%の抗体が維持されます。最後の接種が12月上旬ですと、3月上旬までは80%、5月上旬までは50%、ということになります。
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【他の予防接種との接種間隔】
不活化ワクチン及びトキソイド接種を受けた場合は、6日以上の間隔をあけて、
生ワクチン接種を受けた場合は、ウイルスの干渉を防ぐために27日以上の間隔をあけて、
次のワクチンを接種することが推奨されています。

安全性を確保するために、インフルエンザ予防接種の前に受けたワクチンをご確認ください。

【不活化ワクチン】  ⇒ インフルエンザ予防接種は6日以上あける
インフルエンザ菌b型(Hib)、肺炎球菌、インフルエンザ、DPT、DT、ジフテリア、
破傷風、ポリオ、日本脳炎、A型肝炎、B型肝炎、狂犬病、子宮頸がん

【生ワクチン】 ⇒ インフルエンザ予防接種は27日以上あける
MR、麻疹、風疹、BCG、おたふくかぜ、水痘、ロタウイルス、黄熱
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【妊娠中・授乳中の接種】
 妊婦または妊娠している可能性のある場合には、「予防接種の有益性が、危険性を上回ると判断される場合にのみ接種すること」となっています。よって、万が一の危険性を心配される方は、接種を控えたほうが良いと思われます。
 
 但し、『妊婦がインフルエンザに罹患すると、気管支炎・肺炎などの重篤な合併症を併発しやすく、妊娠週数とともにリスクが増大します(心肺機能が悪化して入院するリスクは、妊娠14~20 週で 1.4 倍、27~31 週で 2.6 倍、 37~42 週で 4.7 倍)。さらに妊婦がインフルエンザに感染すると、自然流産・早産・低出生体重児・不当軽量児・胎児死亡が増加すると言われています。
 
 現在日本で使用されているインフルエンザワクチンは不活化ワクチンであり、理論的に妊婦・胎児に対して問題はなく、米国疾病予防局および米国産婦人科学会は、インフルエンザ流行期間に妊娠予定(妊娠期間に関係なく)の女性への不活化インフルエンザワクチン接種を推奨しています』
(以上、日本産婦人科学会による産婦人科診療
ガイドライン-産科編2017より)。
 
 つまり、日本の産婦人科学会では、積極的な推奨も禁止もしていない状態です(アメリカでは推奨されています)。よって、妊娠中の方は、産科担当医通院中のにご相談されることをお勧めいたします「接種は問題が無い」と言われた妊婦さんは、当院でワクチン接種が可能です

 一方、授乳期間中は、インフルエンザワクチンを接種しても支障はありません。インフルエンザワクチンは不活化ワクチンというタイプで、ウイルスの病原性を無くしたウイルスの成分を用いているため、ウイルスが体内で増えることが無く、母乳を介してお子さんに影響を与えることはありません。    
 
 しかし、授乳期間中にインフルエンザに罹患してしまった場合、授乳を続けながら治療薬(タミフルなど)を使用は出来ません。なので、授乳しながらでも受けられるワクチン接種による予防をお勧めいたします(以下をご参照ください)。
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【授乳中のインフルエンザ治療】
授乳期間中にインフルエンザに罹患してしまった場合、母乳中にインフルエンザウイルスが含まれ、母乳を介して乳児に感染を起こすことはほとんど無いと考えられています。しかし、母親と乳児は日常から接触する機会が多く、母乳とは関係なく、咳などの飛沫感染によって乳児に感染する可能性が高いと言われています。
 そして、抗インフルエンザ薬(タミフル、イナビルなど)は母乳中に移行すると言われており、投薬中に母乳を与えることは避けることとなっています。米国予防注射詰問委員会の勧告では、抗インフルエンザ治療薬について、「授乳中の婦人には投与しない」「投与する場合には授乳は避ける」とあります。
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【今年もワクチン不足の可能性があります】
 上記の通り、昨年は「鶏卵の馴化」、熊本震災によるワクチンメーカーの製造ライン停止などが原因で、ワクチンの供給量が極端に少なく、最後まで接種を受けられなかった人も少なくありませんでした。
 
 今年は、当初に選定したウイルス株がワクチン製造に適していることもあり、大きな混乱が起きていません。
但し、製造量は昨年と同量となる見込みです。また供給のペースも、11月初めまでは昨年以上となりますが、11月中旬以降は昨年と同様にペースが鈍るようです。
(下のグラフをクリックすると拡大表示されます)

ワクチン製造量

ワクチン累積供給量
                 (厚生労働省のHPより)

 
 昨年ほどの混乱は生じないと思われますが、医療機関が在庫できるワクチン数は昨年とほぼ同数と見込まれており、接種時期が後ろにずれ込むほど、ワクチンが足りなくなります。
 かといって、あまりにも早く10月中旬までに接種を受けても、ワクチンの効果が翌年の春先には切れてきますので、前述の【ワクチン接種のおすすめ時期】を参考に、確実な接種のために、医療機関に事前に予約されることをお勧めいたします。
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【当クリニックの予防接種】

(1) チメロサール(水銀を含有した保存料)の入っていない、1人で使い切り型のワクチンは、今回のシーズンもごく少量しか製造されていません。妊婦さんなど、水銀が気になる方のために、ごく少量のみ確保しています
(無くなり次第終了します)。

     シリンジタイプ  ← 今年も、保存料無しシリンジタイプは稀少。


(2) 経鼻ワクチンは行っていません
   従来型の注射ワクチンのみです。経鼻ワクチンが「推奨されるワクチン」として国内で
   認可された場合には、当院も導入を検討いたしますが、現状では導入の予定はありません。
 



(3) 小児は、誤接種を防ぐために「母子手帳」を必ず持参して下さい
    持参の無い場合、安全を重視して、接種はできません。
 
 

(4)   接種開始日は、10/29(月)です
    『完全予約制』とさせていただきます
     (ワクチンの流通数が、昨年程度で少ないため)
       在庫がなくなり次第終了いたします

    当院診察時間に、窓口又はお電話にてお問い合わせをお願いいたします。
     (TEL) 0144-53-5800
  
接種の時期ですが、遅くとも12月上旬までには最後の接種を済ませておくことを
お勧めいたします。
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(5) 価格と回数
 
【生後6ヶ月以上 3歳未満】   
          バイアルタイプ      2500円
2週間以上あけて、2回接種が必要です(3~4週間後をお勧めします)
必ず、母子手帳をご提出ください。


【3歳以上 13歳未満 】
      バイアルタイプ   3000円
               
2週間以上あけて、2回接種が必要です(3~4週間後をお勧めします)
小児は、必ず母子手帳をご提出ください(小学生は、できれば提出して下さい)。


【13歳以上】
           バイアルタイプ   3000円
原則として1回接種です 。
※ 一般に、13歳以上では1回接種で十分な免疫が得られるとされています。
  但し、13歳以上でも基礎疾患(慢性疾患)のある方で、著しく免疫が抑制されている状態
  にあると考えられる方などは、医師の判断で2回接種が可能な場合があります。
 

 

【公費助成を受けられる方】

 平成30年11月1日(木)~31年1月31日(木)

・下記に該当する方は、公費助成が受けられます。
氏名・年齢・住所を確認できる身分証明書や、必要な手帳をお持ちでない場合には、
 公費助成は受けられません
必要書類をお忘れの方は、持参のうえで再来院をお願いいたします

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  窓口での負担は、1,300円です。


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  非課税世帯の方でも、生活保護世帯以外の方は有料になります。
  期間外の接種は、対象外となりますのでご注意ください。
  苫小牧市に住んでいても、苫小牧市に住民登録が無い場合は対象外となります。
  市外の医療機関で接種したときなど、全額自己負担で接種された方への補助はありません。

 

ワクチンは数に限りがある貴重なお薬で、しかも一度開封してしまうと保存することができません。大事なワクチンが無駄にならないよう、接種の予約をしていただく必要があります。

また、体調を崩したり、都合が悪くなって予約をキャンセルされる際には、早めにご連絡いただけますと、貴重なワクチンが無駄にならずに済みます。御協力のほど宜しくお願いいたします。

その他、インフルエンザの予防接種に関するお問い合わせは、遠慮なく、当院の窓口またはお電話でお願いいたします。 
詳細については、下記の厚生労働省のHPに記載がありますので、ご参照下さい。
(下記のボタンをクリックで、厚生労働省からのインフルエンザに関する情報が閲覧できます)
    厚労省 
    (厚生労働省のホームページ)