後鼻漏による咳とは?

たくゆう耳鼻咽喉科クリニックの黒田です。
本日は、よくある症状について、簡単にご説明したいと思います。
 
鼻の中で過剰に分泌された鼻水が、鼻の穴から出てくれば、それはいわゆる「鼻水が出る」ということになります。
しかし、中には「鼻水が前に出ないで、のどの方に垂れていく感じ」で困っている方がいます。
 
まずは下の図をご覧ください。
これは、人の顔の断面を図でお示しした物です。
お分かりいただけますでしょうか。

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健康な方
鼻水は、健康な人でも1日に2~6リットルが作られ、その約3割(0.6~2リットル)は鼻の後方からのどに流れ落ち、本人が知らないうちに無意識に飲み込んでいると言われています。これが後鼻漏(こうびろう)です。ですから、後鼻漏があること自体は病気ではありません。後鼻漏は、健康な方でも生じている生理的なものなのです。

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鼻炎の方
アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎などで、鼻内の鼻水が増えてくると、鼻のあなから鼻水が出て、さらには口蓋垂(のどちんこ)の後ろを回り込んで喉(のど)に落ちていく後鼻漏が普段よりも増えてきます。

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鼻炎の方が仰向けになると…
夜間に寝た状態になると、鼻水はさらに後鼻漏となって流れ落ちるようになります。後鼻漏が増えると、痰が詰まったような感じになります。しかし、実際には痰ではなく後鼻漏がのどに溜まっていることがあります。

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のどに溜まった後鼻漏は、粘り気を増し、また時には黄色味を帯びてくることもあります。睡眠中は、これらを吐き出さない限り、後鼻漏が溜まったままになります。眠ってしまうと、後鼻漏は気にならなくなることが多いようです。

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     朝になると…
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鼻炎をお持ちの方で、朝に起床後に痰の混じった咳が多いという方は、のどに溜まった後鼻漏を吐き出そうとして咳をしているのかもしれません。このような咳は、のどに付着した鼻水を外に吐き出すために大事な役割を持っているため、咳止めでこれを無理に抑え込み過ぎるのは、あまり良くないのかもしれません。
腸の中にたまった有害なものを出すために下痢をするのと同様に、のどに溜まった後鼻漏を出そうとして咳が出る場合には、これを抑え込みすぎては排出すべきものが十分に出てくれません。上記のように後鼻漏が原因の咳の場合には、咳止めを使うよりも、鼻炎の治療を優先したほうが良いと思われます。
また、鼻炎の程度が強い方は、テッィシュでかむ鼻水の量だけでなく、後鼻漏も増えて昼間の咳が出ることがあります。のどの病気ではないので、やはり原因となっている鼻炎の治療が最優先されます。
「ヒュー、ヒュー」と音のなるような咳や、呼吸苦を伴う咳は、気管支喘息などの可能性もあるので、内科や小児科の先生の診察を受けた方が良いです。しかし、鼻の調子が悪くて咳を伴っている場合には、耳鼻咽喉科専門医の診察を受けてみることもお勧めいたします。「鼻水は出ていないし、痰の出る咳なのに、なんで鼻炎薬を処方されるのだろう?」と疑問に思われる方、「後鼻漏による咳」も考えて一度診察を受けてみてはいかがでしょうか。