院長の黒田です。
短い夏も終わり、ちらほらと紅葉も見られる季節となりました。
そして、今年も早くもインフルエンザの予防接種の時期になりました。
今年も、インフルエンザのワクチン接種に関して、重要なお知らせがあります。
大事なお知らせを優先的にご案内いたしますので、以下のインフルエンザに関する一般的な情報は、過去のアーカイブ記事をご参照ください(「院長ブログ」ボタンをクリックして下さい)。
【インフルエンザワクチンが3価から4価になりました】
【インフルエンザウイルスの型とは】
【ワクチンに含まれる添加物について】
【乳幼児ワクチン接種と脳症の関係】
【今年のワクチンの株】
今年は、4価のうち1価だけ種類が変更になっています。
○ 平成28年度(2016/2017シーズン)
A/California(カリフォルニア)/7/2009(X-179A)(H1N1)pdm09
A/Hong Kong(香港) /4801/2014(X-263)(H3N2)
B/Phuket(プーケット)/3073/2013(山形系統)
B/Texas(テキサス)/2/2013(ビクトリア系統)
○ 今年、平成29年度(2017/2018シーズン)
A/Singapore(シンガポール)/GP1908/2015(IVR-180)(H1N1)pdm09 ← 昨年と変更
A/Hong Kong(香港) /4801/2014(X-263)(H3N2)
B/Phuket(プーケット)/3073/2013(山形系統)
B/Texas(テキサス)/2/2013(ビクトリア系統)
この組み合わせは、毎年厚生労働省が流行予測を行って5~6月に公布され、各製薬メーカーは7月にはその発表と全く同じ組み合わせのワクチンを製造し始めます。ですから、ワクチンメーカーによって効果が異なることはありませんし、接種する医療機関によって効果に差が出ることもありません(「○○病院の予防接種は効くけれど、△△クリニックのは効かない」ということは起こりません)。
【接種の年齢と回数】
(1) 6か月以上3歳未満 1回0.25ml 2回接種(2) 3歳以上13歳未満 1回0.5ml 2回接種
(3) 13歳以上 1回0.5ml 1回または2回接種
※ 生後0~6ヵ月まではワクチンを接種しても抗体の上がりが悪く、有効性が確認されていないため、ワクチン接種の対象となっていません(接種希望があっても接種できません)
※ 1回目の接種時に12歳で2回目の接種時に13歳になっていた場合でも、12歳として考えて2回目の接種を受けて構いません。
※ 2回接種する場合は、腕の腫れを減らすため、左右交互に打つことが勧められています。
【ワクチンの効果が出る期間】
インフルエンザワクチンは接種後2週目から抗体が上昇し始めて1ヵ月でピークに達し、その効果は約5ヵ月間持続します。2回接種が必要な場合、1回目の接種で抗体がピークに達している1か月後に追加接種した場合に最も抗体が上昇しますので、2回目の接種はこの頃に受けるのがよいでしょう(一般的には、接種間隔は2~4週とされています)。以下は当院として推奨するワクチン接種時期の例です。遅くとも12月上旬までには最後の接種を済ませておくことをお勧めいたします。(2回接種の例)
1回目 10月下旬~11月上旬
↓(4週後)
2回目 11月下旬~12月上旬
(1回接種の例)
1回目 10月下旬~12月上旬
ワクチン接種後の効果の持続期間ですが、一般的には、2回の接種後1か月で77%が有効予防水準に達し、接種後3ヶ月で有効抗体水準は約78..8%と維持されていますが、接種後5ヶ月では約50.8%まで減少すると言われています。
つまり、11月上旬に最後の接種をした方は、2月上旬までは約80%、4月上旬までは50%の抗体が維持されます。これが12月上旬ですと、3月上旬までは80%、5月上旬までは50%、ということになります。
【他の予防接種との接種間隔】
不活化ワクチン及びトキソイド接種を受けた場合は、6日以上の間隔をあけて、生ワクチン接種を受けた場合は、ウイルスの干渉を防ぐために27日以上の間隔をあけて、
次のワクチンを接種することが推奨されています。
安全性を確保するために、インフルエンザ予防接種の前に受けたワクチンをご確認ください。
【不活化ワクチン】 ⇒ インフルエンザ予防接種は6日以上あける
インフルエンザ菌b型(Hib)、肺炎球菌、インフルエンザ、DPT-IPV、DPT、DT、ジフテリア、
破傷風、ポリオ、日本脳炎、A型肝炎、B型肝炎、狂犬病、子宮頸がん
【生ワクチン】 ⇒ インフルエンザ予防接種は27日以上あける
MR、麻疹、風疹、BCG、おたふくかぜ、水痘、ロタウイルス、黄熱
【妊娠中・授乳中の接種】
妊娠中の接種に関する安全性は確立していないので、妊婦または妊娠している可能性のある場合には、予防接種の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ接種すること、となっています。予防接種後の胎児の先天異常の発生率は、接種を受けていない自然発生率より高くなることは無いという報告もありますが、妊娠中の投与に関する安全性は確立しておらず、動物実験では薬剤の胎盤通過性が報告されています。よって、万が一の危険性を心配される方は、接種を控えたほうが良いと思われます。妊娠中の方は、通院中の産科担当医にご相談されることをお勧めいたします。「接種は問題が無い」、と言われた妊婦さんは、当院でワクチン接種が可能です。一方、授乳期間中は、インフルエンザワクチンを接種しても支障はありません。インフルエンザワクチンは不活化ワクチンというタイプで、ウイルスの病原性を無くしたウイルスの成分を用いているため、ウイルスが体内で増えることが無く、母乳を介してお子さんに影響を与えることはありません。
しかし、授乳期間中にインフルエンザに罹患した場合、授乳を続けながら抗インフルエンザ薬(タミフルなど)を使用することは出来ません。なので、授乳しながらでも受けられるワクチン接種による予防をお勧めいたします(以下をご参照ください)。
【授乳中のインフルエンザ治療】
授乳期間中にインフルエンザに罹患してしまった場合、母乳中にインフルエンザウイルスが含まれ、母乳を介して乳児に感染を起こすことはほとんど無いと考えられています。しかし、母親と乳児は日常から接触する機会が多く、母乳とは関係なく、咳などの飛沫感染によって乳児に感染する可能性が高いと思われます。
そして、抗インフルエンザ薬(タミフルやリレンザなど)は母乳中に移行すると言われており、投与中に母乳を与えることは避けることとなっています。米国予防注射詰問委員会の勧告では、抗インフルエンザ治療薬について、「授乳中の婦人には投与しない」「投与する場合には授乳は避ける」とあります。
【経鼻ワクチンは行っていません】
これまで米CDC(米疾病対策センター)は、経鼻の弱毒生インフルエンザワクチンの『フルミスト』を、「子どもへの感染予防効果が認められる」と勧奨してきましたが、昨年6月に一転、「2016/2017シーズンは勧奨しない」と発表しました。CDCの発表は、米予防接種諮問委員会(ACIP)の「2〜17歳での効果(全型のインフルエンザを対象)は、2013-2014シーズンがマイナス1%、2014-2015が3%、2015-2016が3%」などとする調査報告を受けたものです。効果がマイナスとは、ワクチン未接種の方が感染しにくいという解析結果だったことを示します。
2013/2014、 2015/2016のシーズンは、通常の皮下接種の不活化ワクチンの効果が約60%なのに対し、経鼻ワクチンの「フルミスト」の効果が有意に低かったとされています。特に、重症化しやすい、A型のH1N1型への効果はほぼゼロだったことが話題となりました。
いずれ、国内で製造・認可される経鼻ワクチンが、「推奨されるワクチン」となった場合には、当院も導入を検討いたします。しかし、日本国内で不認可となっている現状では、当院では導入の予定はありません。
【今年も、ワクチンが足りなくなる可能性があります!】
上記の通り、毎年7月にはワクチンメーカーが製造を開始しており、日数をかけてワクチンが完成します。なので、流通量が足りなくなったからといって、急遽増産することは出来ません。
昨年は、熊本市にあるワクチンメーカーである化学及血清療法研究所(化血研)が、熊本震災の影響で、製造設備に甚大な被害が出たため、全ての製品の製造が止まり、ワクチン供給量が例年よりも少なくなりました。
今年は、同社の復旧に伴い、ワクチンが供給されるようになりましたが、医療機関に納品されるのが12月中旬と大変遅くなります。それまでは、他のワクチンメーカーの製品を使うことになるのですが、今年は、他のメーカーの生産量が昨年よりも大幅に少なくなりました(昨年比60%のメーカーもあります)。
ワクチン不足については、厚生労働省が「今シーズンの供給量は、昨年度よりも10%減」、と発表しています。
(下のグラフをクリックすると拡大表示されます)
(厚生労働省のHPより)
また、各種メディアでも、
「今シーズンは、インフルエンザが早期から流行していること」
「ワクチンの供給量が不足しているため、医療機関でも十分な量の確保が難しい状態であること」
が報じられています
(下記のボタンをクリックすると、供給量不足の原因など、ニュースが閲覧できます)。
(J-CASTのHPより)
この状況は、当院に限ったことでは無く、日本国内の全ての医療機関に当てはまることです。
今年は、
・化血研製のワクチン供給が大幅に遅れ、
・流行前に間に合うようなワクチンの増産も出来ず、
・国内未承認の経鼻ワクチンも、有効性の問題から、使用を中止したままの医療機関があり、
・保存料無しの使い切りワクチンも供給がほとんど無く、
・例年以上のワクチン不足のために、早期にワクチン接種を終了する医療機関が増える可能性があります。
今シーズンも、早めに接種を済ませる事をお勧めすると同時に、確実な接種のためには、医療機関に事前に予約されることをお勧めいたします。
(1) チメロサール(水銀を含有した保存料)の入っていない、1人で使い切り型のワクチンは、今シーズンもほとんど製造されておらず、接種が出来ません。
理由は、上記の通り、メーカーが十分な供給を行えない結果、全国的なワクチン不足が生じているからです。ワクチンの安定供給を目的に、今年は保存料無しの使い切りワクチンの製造は、極少数のみとなり、従来のバイアルタイプのワクチンのみを集中的に製造することで、ワクチン不足が生じないようにする、という方針となったようです。バイアルの規格も、今年は1つしか製造されない緊急事態ですので、無駄にしないように、ワクチンを大事に使用しなければなりません。
←今年も、保存料無しのシリンジタイプは無し。
(2) 経鼻ワクチンは行っていません。
従来型の皮下接種型のワクチンのみです。
経鼻ワクチンは、データの蓄積により、皮下接種型よりも効果が低いことがある、と判明しています。
「経鼻ワクチンが推奨されていない」ことに関しては、上記のコラムをご覧下さい。
(3) 小児は、誤接種を防ぐために母子手帳を持参して下さい。
(4) 接種開始日は、10/23(月)です。
10~11月中は、完全予約制とさせていただきます。
当院診察時間にお電話にてお問い合わせをお願いいたします。
(TEL) 0144-53-5800
12月以降は、予約の方を優先にしたいと考えております。完全予約制ではありませんが、確実に接種を受けていただくためには、在庫確認のために電話でのお問い合わせと予約をお勧めいたします(在庫がなくなり次第終了いたします)。
接種の時期ですが、遅くとも12月上旬までには接種を済ませておくことをお勧めいたします。
2回接種の方は、1回目を10月下旬~11月上旬に、2回目をその3~4週後に受けることをお勧めいたします。
ワクチン不足のために2回目の接種ができなくならないように、2回目の分も予約する事をお勧めいたします。
(5) 価格と回数
【生後6ヶ月以上 3歳未満】
2週間以上あけて、2回接種が必要です(3~4週間後をお勧めします)。
母子手帳をご提出ください。
【3歳以上 13歳未満 】
2週間以上あけて、2回接種が必要です(3~4週間後をお勧めします)。
小児は母子手帳をご提出ください。
【13歳以上】
原則として1回接種です 。
※ 一般に、13歳以上では1回接種で十分な免疫が得られるとされています。
但し、13歳以上でも基礎疾患(慢性疾患)のある方で、著しく免疫が抑制されている状態にあると考えられる方などは、医師の判断で2回接種となる場合があります。
【公費助成を受けられる方】
平成29年11月1日(水)~30年1月31日(水)
・下記に該当する方は、公費助成が受けられます。
・氏名・年齢・住所を確認できる身分証明書や、必要な手帳をお持ちでない場合には、公費助成は受けられません。
・必要書類をお忘れの方は、持参のうえで再来院をお願いいたします。
窓口での負担は、(1,300円)です。
非課税世帯の方でも、生活保護世帯以外の方は有料になります。
期間外の接種は、対象外となりますのでご注意ください。
苫小牧市に住んでいても、苫小牧市に住民登録が無い場合は対象外となります。
市外の医療機関で接種したときなど、全額自己負担で接種された方への補助はありません。
ワクチンは数に限りがある貴重なお薬で、また瓶の製剤の場合、一度開封してしまうと保存することができません。大事なワクチンが無駄にならないよう、窓口で予約していただくことをお勧めいたします(予約がなければ接種が受けられないということではありませんが、確実に接種を受けていただけるためには予約をお勧めいたします)。
また、体調を崩したり、都合が悪くなって予約をキャンセルされる際には、早めにご連絡いただけますと、貴重なワクチンが無駄にならずに済みます。御協力のほどを宜しくお願いいたします。
その他、インフルエンザの予防接種に関するお問い合わせは、遠慮なく、当院の診察時間にお電話でお願いいたします。
詳細については、下記の厚生労働省のHPに記載がありますので、ご参照下さい。
(下記のボタンをクリックで、厚生労働省からのインフルエンザに関する情報が閲覧できます)
(厚生労働省のホームページ)