こんにちは。たくゆう耳鼻咽喉科クリニックの黒田です。
元号が、平成から令和に変わりました。しかし、周りで起こっていることには何ら変化が無く、新しい時代を感じることがあまり無い気がしているのは、私だけでしょうか。
5~6月には、小学校で耳鼻科の検診が始まります。学校検診の結果、耳鼻咽喉科の受診を勧められた場合には、忘れずに受診しておきましょう。
さて、今年も花粉症が本格化してきました。
鼻の症状があるときに、風邪なのか、アレルギー性鼻炎(花粉症を含む)なのかを区別することは、非常に重要です。なぜなら、アレルギー性鼻炎の場合には、風邪薬では効果が無く、また、花粉症の程度によって適切な薬剤を選択しなければ、抗アレルギー剤を内服しても十分な効果が得られないことがあるからです。
アレルギー性鼻炎かどうかを調べて、実際に鼻を見てもらってから処方を受けることが大事な理由は、ここにあります。
季節性の花粉症ですが、4月下旬のゴールデンウイーク前の頃から、「シラカバの花粉症」が始まっています。シラカバ花粉症では、鼻水、鼻づまり、くしゃみ、目のかゆみ、頭痛などの症状が強く出る傾向があります。
それでは、今年の2月に発表されていたシラカバ花粉症の飛散予測について、見てみましょう。飛散数は、過去10年との比較では50~70%と少ないだろう、と予想されていました。
(北海道立衛生研究所のHPより)
予想は当たっており、例年に比べて非常に少なかったことが分かります。
例年ですと、シラカバ花粉症の方は、4月のうちに「鼻水・鼻づまり・くしゃみ・目のかゆみ」が強くなり、受診されていました。
しかし、今年は5月の中旬以降、特に下旬になってから受診される方がほとんどでした。飛散量と症状の強さが、完全に一致するわけではありませんが、今年は症状が軽くて、様子をみていた方が多かったと思われます。
6月以降は、シラカバ花粉の飛散が無くなりますので、アレルギーの薬は終了です。また来年の4月以降に花粉症の症状が始まったら、治療を行うことになります。
シラカバ花粉の飛散は少ないままで終わりになりますが、それに代わって夏の花粉症が早々に始まっています。「カモガヤ」に代表されるイネ科の牧草系の雑草の花粉症です。例年、5月中は少量しか飛散せず、6月に入ってからピークを迎えるのですが、今年は、5月の時点で大量に飛散しています。
下図のように、これからも飛散量が増えていきそうな勢いで、今年の6~7月は、「カモガヤ花粉症」の症状が強く出そうです。
(北海道立衛生研究所のHPより)
実際、当院で「カモガヤ花粉症」と診断されている方は、「くしゃみ・鼻水・鼻づまり・目のかゆみ」の症状で、5月中から治療を開始しています。そして、来院される患者さんの数も例年に比べて多い印象です。自分自身が「カモガヤ花粉症」だと分かっている方は、早期から適切な治療を行えるわけです。
ちなみに、「カモガヤ」って、どんな草だと思いますか。実は、牧草地帯で無くても、普通に道ばたに生えています。公園や住宅の庭にも生えています。下の写真が「カモガヤ」です。どうでしょう、見たことがありませんか?
花粉症のときには、気道の過敏性が亢進して咳も出やすく、「アトピー咳嗽」と言われるような、一度始まるとなかなか止まらない咳を合併することもあります。そして、鼻水が多くなると後鼻漏も増えるため、鼻汁による咳を伴って、さらに症状は悪化することがあります。
「鼻かぜではなく、花粉症かも」、「鼻とのどの風邪ではなく、花粉症に伴う咳かも」と考えてみても良いかもしれません。
咳がなかなか止まらない場合には、耳鼻咽喉科専門医でアレルギーの検査を受けていただき、アレルギーの治療を開始することをお勧めすることがあります。
また、小児の場合には、鼻水の出る状態が長く続くと「中耳炎」を合併することが多いため、しっかりと耳垢を取り除いて鼓膜を確認することが重要です。中耳炎は軽症であれば薬を飲むことで改善しますが、重症化してしまうと、激しい耳痛、発熱、耳だれが出ることがあり、場合によっては鼓膜切開が必要になることがあります。
小さな子供は、耳の不快感があっても保護者に訴えないでいることもあり、「鼻水が出ているし、もしかしたら中耳炎になっていないかな?」と考えてあげることが大事です。
そして、小児、成人を問わず、「アレルギー症状」と決めつけずに副鼻腔炎の有無を調べることも重要です。小児の場合、アレルギー性鼻炎患者の約50%が副鼻腔に異常があり、逆に副鼻腔炎患者の25~75%にアレルギー性鼻炎が認められると言われています。
2つの病気を合併している場合には、両方の治療が必要なことが少なくありません。
鼻水、鼻づまり、くしゃみなどの鼻症状については、耳鼻咽喉科専門医の受診をお勧めいたします。