つい先日の「お知らせ」でもお伝えいたしましたが、今シーズンは、インフルエンザが例年よりも1ヶ月以上早くから流行し始め、11月からは、流行が急拡大しています。
定点医療機関(人口や医療機関の分布等を勘案して、選定された医療機関)の1週間あたりの報告数が、10.0を超えると「注意報」、30.0を超えると「警報」が出されます。
・「注意報」→ 大きな流行が発生または継続しつつある
・「警報」→ 今後4週間以内に大きな流行が発生する可能性が高い
当院のHPの「お知らせ」では、11/25付けで既に全国レベルで「警報」レベルに達しており、11月中に「警報」が出るのは、2009年以来の16年ぶりとお伝えしました。
北海道内でも、11月初旬から続々と「警報」が発令されており、札幌市では、11/7に「警報」が発令されており、学級閉鎖に留まらず、学年閉鎖や学校閉鎖(休校)も多数出ております。
11/17~23までの1週間で、道内の定点医療機関からの報告は、前の週の1.4倍となる61.78人と、過去10年で最も高い数となっています。
(11/28のSTVニュースより。上記クリックで記事へ)
(11/7のHTBニュースより。上記クリックで記事へ)
北海道内の過去5週間の感染の急拡大は以下の表の通りです。
(北海道感染症情報センターのHPより。クリックで拡大)
前回の「お知らせ」に掲載した11/10~16に比べて、道内での感染が急拡大していて、苫小牧も「注意報」の22.71から「警報」の43.86へと、たった1週間で倍増しています。
苫小牧保健所から、東胆振の1市4町に「インフルエンザ警報」が発表されたのは11/27です。
(11/10~11/16) (11/17~23)
(同上。クリックで拡大)
苫小牧での感染急拡大は、以下の通りです。
(11/10~11/16) (11/17~23)
(同上。クリックで拡大)
では、なぜ今シーズンは、これほど流行が急拡大しているのかですが、流行しているインフルエンザの株に問題があるようです。
インフルエンザウイルスは、内部のタンパク質の種類によって、A型、B型、C型の3種類に分類されます。人への感染で問題になるのはA型、B型です。
ウイルスは、その型を少しずつ変えて、人の免疫をすり抜けて感染します。「新型コロナウイルス」も、元々は夏風邪の主な原因だったコロナウイルスの変異型です。
インフルエンザウイルスの株の詳細について詳しく知りたい方は、過去の院長ブログを御参照ください。
現在、急激な感染拡大の原因となっているのが、インフルエンザウイルスの新たな変異株である「サブグレードK」です。7~8月にピークをむかえる南半球で出現して、北半球のイギリスで大流行となっています。インバウンドで海外からの観光客などによって、国内に持ち込まれた可能性が考えられています。
「サブグレードK」は、A型のH3N2型が変異したもので、感染力が強くなっています。症状は、高熱・咳・咽頭痛の他に、嘔気・下痢・食欲不振なども目立ちます。
(TBS NEWSより。上記クリックで記事へ)

12月になり、大人は仕事での会合や忘年会などが増えて、子供達の冬休みもまだ先ですので、人との接触が非常に多い時期となります。また、年末年始には、帰省などで高齢者や基礎疾患のある人と集まったり、旅行などの行事を控えている方も多いかと思います。冬になり空気の乾燥が進んでいることも、感染拡大の一因になりそうです。
小児、高齢者、基礎疾患のある方、妊婦さんなどは感染すると重症化する可能性が高く、特に小児の場合には、インフルエンザ症状の重症化による異常行動に注意が必要です。これは、薬の副作用によるものでは無く、インフルエンザの重症化による高熱により、脳が混乱状態となり生じるものです。
東京都では、インフルエンザで学校を休んで自宅にいた小学校1年生の男児が、保護者が不在の時間に、マンションの4階から飛び降りるという異常行動がありました。幼児や児童など未成年の子供では、このような痛ましい事故が起きないように、インフルエンザに罹患しても重篤化させない、あるいは異常行動を防止するための対策が必要です。
(ANN NEWSより。上記クリックで記事へ)
札幌、旭川、函館、釧路などの大都市が、11月早々に警報レベルに達し、学校、職場、家庭で感染が広がったのに対し、苫小牧では11月末になって急激に感染拡大が生じています(警報発令は、札幌が11/7、苫小牧は11/27です)。
全道的に、警報が早々に出されるほど流行が拡大していたため、ワクチン接種もかなり進んでおり、医療機関のワクチンの在庫が無くなっているところも多数あるようです。苫小牧は、ワクチン接種者がかなり少ないため、今後のさらなる感染拡大が懸念されます。
ワクチン接種後、抗体が出来るまでに最低2週間を要しますので、ワクチン接種を考えている方、特に未成年の幼児、児童、受験生などは、お早めに接種をご検討ください。
