インフルエンザによる出席停止期間について

こんにちは。
たくゆう耳鼻咽喉科クリニックの黒田です。

インフルエンザの予防接種は、もうお済みでしょうか。
以前にもお知らせ致しましたが、12月初めまでには最後の接種を済ませておくことをお勧め致します。詳しくは、前号のブログをご参照下さい。

北海道では、既にインフルエンザによる学級閉鎖も出ております
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20131107-OYT1T00285.htm

前号に引き続き、インフルエンザに関する情報をお伝えしたいと思います。

【かぜとインフルエンザの違い】

普通のかぜは1年を通してみられますが、インフルエンザは季節性を示し、日本では例年11~12月頃に流行が始まり、1~3月にピークを迎えます。

かぜの多くは、発症後の経過がゆるやかで、発熱も軽度(多くは37℃台)であり、くしゃみやのどの痛み、鼻水・鼻づまりなどの症状が主にみられます。

これに対し、インフルエンザは高熱(多くは38℃以上)を伴って急激に発症し、全身倦怠感、食欲不振などの全身症状が強く現れます。関節痛、筋肉痛、頭痛も現れます。また、インフルエンザは、肺炎や脳炎(インフルエンザ脳炎)などを合併して重症化することがあります。

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【インフルエンザの迅速検査】

鼻の奥から粘液をぬぐい取り、迅速検査キットにて10分程度で結果が判明します。

検査で陽性と出た場合、インフルエンザと断定してほぼ間違いはありません。しかし、陰性と出た場合、インフルエンザであることもインフルエンザ でないこともあり得ます。特に発病後1日以内は検査の感度が低いため、インフルエンザであるのに検査では陰性となる可能性があります(これを偽陰性 と言います)。
早期発見・早期治療が原則で、発症後48時間以内の治療が有効なのですが、あまりにも早期の検査の場合には正しい結果が出ないことがあるのです。

1回検査をして陰性と判定されても、翌日以降の再検査で陽性と判定されることもあります。症状が続く際には、再度ご相談いただくことをお勧め致します。

当院では、出来るだけ感度が良く、また短時間で結果が判明する検査キットを採用しております。


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【インフルエンザに罹患した際の出席停止期間】

平成24年4月2日に、文部科学省より「学校保健安全法施行規則の一部を改正する省令の施行について」の通知が出され、インフルエンザ等の出席停止の期間の基準が改正され、出席停止期間が延長されました。
解熱した後もインフルエンザウィルスは排出され続けており、他の人に感染する危険性があるためです。
以前までの基準(解熱後2日)では、幼稚園や学校には登校できませんので、ご注意下さい。

(学校保健安全法施行規則 第19条 )

出席停止の期間の基準は、次のとおりとする。
インフルエンザ(鳥インフルエンザ(H五N一)及び新型インフルエンザ等感染症を除く)にあって
は、発症した後5日を経過し、かつ、解熱した後2日(幼児にあつては、3日)を経過するまで

http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/nc/1319523.htm
 

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インフルエンザによる発熱期間が短いほど、登園・登校しても良い日も早くなるということが、お分かりいただけたかと思います。

また、小さなお子さんのいるご家庭では、家族内での感染を予防する意味で、お子さんを含めてご家族で予防接種を受けられた方が良いと思われます。

予防接種の効果が最大になるまでに約1ヶ月を要することを考慮すると、12月初めまでの接種をお勧め致します。12月末までは、予約無しで来院していただいてもワクチンの接種が可能です。

但し、年明け1月以降の予防接種については、予防効果の見地から考えると有効性に疑問があるため、当院では原則として行わない予定です。ワクチンの在庫に余裕がある場合には、1月に限り、完全予約制にて行うことも検討しております。詳しくは窓口、または電話にてお問い合わせをお願い致します。

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インフルエンザ予防接種の続報です。

こんにちは。
院長の黒田です。

先日ご案内していたインフルエンザの予防接種ですが、以下の通り決定いたしました。インフルエンザ予防接種に関する詳しい内容については、以前のブログにてご説明しておりますので、よろしければ再度ご参照ください。

(1) チメロサール(水銀を含有した保存料)が入っていない、1人で使い切り型のワクチンは、流通数自体が少なくて在庫数に限りがありますので、無くなり次第終了です。小さなお子さんや、授乳中の方、妊婦さん(通院中の産婦人科で接種の許可すみ)、水銀の副作用が心配な方には、特にお勧めいたします。

水銀なしをご希望の方は、
・1回接種の方は、入荷次第早い者順で終了
(予約確保は原則として行っていませんが、早期の接種希望の方はお電話で
お問い合わせください)。
・2回接種の方(13歳未満)は、1回目を当院で行った場合に限り4週後まで
確保の予約を受け付けます。

(2) 小児は、誤接種を防ぐために母子手帳を持参して下さい。

(3) 下記に該当する方は、公費助成により、窓口負担1,050円です。
証明書や手帳を持参して下さい。
・60-64歳の苫小牧市民で、一定の障害者はそれを証明する身体障害手帳。※1
・65歳以上の苫小牧市民は、年齢を確認するための運転免許証や保険証。

※1 心臓・腎臓・呼吸器の機能またはヒト免疫不全ウイルスによる免疫の機能に
障害を有する方で、身体障害者等級が単独で1級の方。
※1 予防接種を希望する方は、かかりつけの医師とよく相談のうえ、接種を受ける
か否か判断してください。

(4) 上記(3)該当者で、かつ生活保護世帯は無料です。保護手帳を持参ください。

(5) 接種開始日は、10/21(月)です。
10月中は、完全予約制とさせていただきます。
当院診察時間にお電話にてお問い合わせをお願いいたします。
(TEL) 0144-53-5800

11月以降ですが、予約の方を優先にしたいと考えております。完全予約制では
ありませんが、確実に接種を受けていただくためには、在庫確認のために電話での
お問い合わせと予約をお勧めいたします(在庫がなくなり次第終了いたします)。

チメロサールの入っていない、1人で使いきりのタイプは、今のところ入荷日が
決まっておりません。入荷日につきましては、お電話にてお問い合わせをお願い
いたします。

以前のブログでもご説明いたしましたが、遅くとも12月上旬までには接種を済ませ
ておくことをお勧めいたします。
2回接種の方は、1回目を10月下旬~11月上旬に、2回目をその3~4週後に
受けることをお勧めいたします。

(6) 価格と回数

【生後6か月以上 1歳未満】

1回2000円

2週間以上あけて、2回接種が必要です(3~4週間後をお勧めします)。
母子手帳をご提出ください。

【1歳以上 3歳未満】
→水銀の添加物を含まず、アレルギーなどの副作用が少ないタイプも選べます。
但し、数に限りがありますので、在庫がなくなり次第で終了になります

1回2000円
1回3000円(水銀の保存料なし。1人で使い切りタイプ)

2週間以上あけて、2回接種が必要です(3~4週間後をお勧めします)。
母子手帳をご提出ください。

【3歳以上 13歳未満】
→水銀の添加物を含まず、アレルギーの副作用が少ないタイプも選べます。
製造数が非常に少ないです。在庫がなくなり次第、終了します

1回2500円
1回3300円(水銀の保存料なし。1人で使い切りタイプ)

2週間以上あけて、2回接種が必要です(3~4週間後をお勧めします)。
小児は母子手帳をご提出ください。

【13歳以上】
→水銀の添加物を含まず、アレルギーの副作用が少ないタイプも選べます。
製造数が非常に少ないです。在庫がなくなり次第、終了します

1回2500円
1回3300円(水銀の保存料なし。1人で使い切りタイプ)

原則として1回接種です。※2

※2 一般に、13歳以上では1回接種で十分な免疫が得られるとされています。
但し、13歳以上でも基礎疾患(慢性疾患)のある方で、著しく免疫が
抑制されている状態にあると考えられる方などは、医師の判断で2回接種
となる場合があります。

 ワクチンは数に限りがある貴重なお薬で、また瓶の製剤の場合、一度開封してしまうと保存することができません。大事なワクチンが無駄にならないよう、窓口で予約していただくことをお勧めいたします(予約がなければ接種が受けられないということではありませんが、確実に接種を受けていただけるためには予約をお勧めいたします)。

 また、体調を崩したり、都合が悪くなって予約をキャンセルされる際には、早めにご連絡いただけますと、貴重なワクチンが無駄にならずに済みます。御協力のほどを宜しくお願いいたします。

 その他、インフルエンザの予防接種に関するお問い合わせは、遠慮なく、当院の診察時間にお電話でお願いいたします。

http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou01/qa.html
(厚生労働省のホームページ)

 

長引く夜間に強い咳でお困りの方へ

こんにちは。
たくゆう耳鼻咽喉科クリニックの黒田です。

本日は、長びく夜間に強い咳のお話です。

・熱も無いし、のども痛くないけれども、咳だけがなかなか治らない。
・昼間は何ともないけれど、夜になると咳がひどくなる。
・病院から咳止めをもらっているし、胸のレントゲンも聴診音も異常がないのに咳が続く。

そんな経験はないでしょうか。

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咳がある時には咳止めの薬を長く飲んでいれば、いずれは治るのでしょうか。
私はそうは思いません。
長びく咳に、脳へ直接作用する中枢性咳止めを漫然と使用することは、症状が良くならないだけではなく、原因が分からなくなるため、場合によってはやめた方が良いかもしれません。
(麻薬の「リン酸コデイン」、 非麻薬の「アストミン」、「メジコン」、「アスベリン」など)

咳の原因にも色々な種類があり、その原因に応じた治療をしなければ、咳止めを内服しても症状の改善は期待できません。一つの例として、以前に「後鼻漏による咳」をご紹介いたしました。いくら咳止めを使用しても、鼻の治療をしなければ治らない咳です(詳細については、過去の記事をご参照ください)。

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胸の検査を受けても異常が無く、のどに炎症も無い、後鼻漏も無いのに咳が続く場合は、どのように考えたらよいのでしょうか。

長びく咳の原因疾患には以下のようなものが考えられます。

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上記の4. 5. 6.が、鼻炎や副鼻腔炎が関連した咳です。
今回は頻度の高い、2.「咳喘息」と3.「アトピー咳嗽」についてご説明いたします。

日本における慢性咳嗽(3週間以上の咳)の3大原因は、
咳喘息
アトピー咳嗽
副鼻腔気管支症候群
です。

上記とよく似た言葉で 『気管支喘息』 がありますが、こちらは、
1)    気管支の粘膜が腫れて、その周囲の筋肉も収縮して、空気の通り道が狭くなる病気。
2)    突然に「ヒューヒュー」「ピーピー」「ゼイゼイ」とする息苦しさや咳が出る病気。
(これを「喘鳴(ぜんめい・ぜいめい)」と言います)
3)    薬で改善することが多いですが、重症の場合には入院が必要になることがあります。
4)    「ヒューヒュー」「ゼイゼイ」と喘鳴があって苦しい場合には、小児科や内科を急いで受診されることを強くお勧めいたします。

今回は、「咳喘息」と「アトピー咳嗽」の症状や治療について、分かりやすくご説明していきたいと思います。

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【咳喘息】

 喘鳴や呼吸困難を伴わず、症状は乾いた咳のみです。夜間(特に就寝時、夜中から早朝、起床時など)に多く、温度差のある空気を吸い込んだ時にも生じます。

 発生原因はまだ明らかではありませんが、気管支の周りの筋肉に軽度の収縮が起こり、筋肉内の神経を通じて脳の咳中枢が刺激され、その結果として咳が出ると考えられています。したがって、気管支の筋肉の収縮を改善する気管支拡張剤が有効です。

 咳喘息の簡易診断基準ですが、
(1) 喘鳴を伴わない咳が、3週間以上持続。病院で聴診をしても喘鳴がない。
(2) 気管支拡張剤が有効
です。
つまり、気管支喘息とは診断されなくても、気管支拡張薬がよく効くのです。

 治療ですが、
軽症: 気管支拡張薬のみ、又はロイコトリエン拮抗薬の併用で咳嗽が消失。
中等症: 吸入ステロイド薬の併用で咳嗽が消失。
重症: 経口ステロイド薬の併用で咳嗽が消失。
難治性:上記の治療でも咳嗽が消失しない場合。
(重症と難治性は専門医の診療が必要です)。

咳喘息の30%は、数年の内に典型的喘息を発症しますが、長期吸入ステロイド療法は
これを予防する効果があります

※    咳喘息は、短期間で治療を中断してしまうと再発しやすい傾向があり、2~3ヶ月間の吸入ステロイド薬による治療が必要です。

※    咳喘息は気道のアレルギー反応と末端の気道の閉塞が特徴的な病気です。そこで、気道のアレルギー反応を抑える吸入ステロイド薬と気道の閉塞を抑える気管支拡張薬が、一度に吸入することのできる「合剤」があります(最後にご紹介いたします)。

【アトピー咳嗽】

 1989年に日本から提唱された疾患概念で、乾いた咳が出ます。夜間(特に就寝時、夜中から早朝、起床時など)に多く、温度差のある空気を吸い込んだ時にも生じます。気管支拡張薬が無効で、ヒスタミンH1-拮抗(きっこう)薬とステロイド薬が有効です。

「アトピー素因」とは、アレルギー性疾患の既往歴がある、家族にアレルギー疾患の方がいるなど、アレルギー疾患を発症する可能性のある素因、という意味です。気管支喘息、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、アトピー性皮膚炎のいずれかの既往がある方は、これに該当します。

 気管や気管支に好酸球というアレルギー細胞が関連した炎症が生じ、これらの表面の知覚神経が過敏になり、咳感受性が亢進して咳が出ます。咳喘息でも同様の病態は生じますが、アトピー咳嗽では末梢気道(内径が2mm未満の細い気管支)には生じないのが違いです。

 アトピー咳嗽の簡易診断基準ですが、
(1)    喘鳴や呼吸困難を伴わない乾性咳嗽が3週間以上継続
(2)    気管支拡張薬が無効
(3)    アトピー素因を示唆する所見や、痰に好酸球(アレルギー細胞)の増加がある
(4)    ヒスタミンH1拮抗薬 又は/及び ステロイド薬で咳発作が消失
です。
咳喘息とアトピー咳嗽は、区別するのが難しい場合もあります。気管支拡張薬が無効でヒスタミンH1拮抗薬やステロイド薬で改善することが、診断の決め手になることもあります。これを診断的治療と言います。

※アトピー咳嗽が気管支喘息に移行することは、原則としてありません。よって、症状が軽快した場合、咳喘息では長期吸入ステロイド療法が推奨されますが、アトピー咳嗽では治療を終了します。

以上、長びく咳について、私なりにまとめると、以下の図のようになります。
長びく咳があれば、まずは内科の先生の診察を受けて、胸のレントゲンや聴診で異常がないことを確認してもらうことが重要です。肺結核やマイコプラズマ肺炎、COPDなどの肺疾患がないことが確認されたのに、咳が長引いているときは、以下の様に考えることができます。

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疾患別の治療薬は以下の通りです。

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http://www.3nai.jp/weblog/entry/27953.html
(金沢大学呼吸器内科ホームページより)

 では、咳が長引いて夜も眠れないような場合、気管支拡張剤だけを使って様子見となるのでしょうか。
 それが「咳喘息」だった場合には症状は改善するでしょうが、もしも「アトピー咳嗽」だった場合には、症状の改善は期待できません。次回の受診日まで症状の改善がない可能性があることから、実際の診療の際には、咳の状態やアトピー素因の有無などにより、ロイコトリエン拮抗薬やステロイド吸入剤なども一緒に処方することがあります。アレルギー性鼻炎の患者さんは、ヒスタミンH1拮抗薬とロイコトリエン拮抗薬を同時に処方することもあります。

【長引く咳の治療に使う薬(例)】

(1)気管支拡張薬

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ホクナリンテープ

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ベラチン

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セレベント

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メプチン

(2)ロイコトリエン拮抗薬
ロイコトリエンという気管支収縮や分泌物(痰)の増加作用を有する物資の作用を阻害する薬で、気管支拡張作用と気道炎症抑制作用を有する薬です。アレルギー性鼻炎合併喘息や運動誘発性喘息、アスピリン喘息に有効な薬です。

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キプレス

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オノン 

(3)ヒスタミンH1拮抗(きっこう)薬
(3)ヒスタミンH1拮抗(きっこう)薬
いわゆるアレルギー用の内服薬です。
咳が主訴で、鼻の症状は無いのになぜ鼻炎薬を処方されるのが疑問の方もいらっしゃる方もいるかもしれません。しかし、前述の通り、アレルギー素因のある方では高い咳止め効果が得られることがあります。
 

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ザイザル

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アレグラ

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アレロック

 
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ジルテック ドライシロップ

(4)吸入ステロイド
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フルタイド

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キュバール

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オルベスコ

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パルミコート

(5)合剤
 (気管支拡張薬)+(吸入ステロイド) の両方が入った合剤です。
 咳喘息には著効し、アトピー咳嗽には気管支拡張薬成分は無効ですがステロイド成分の効果があります。
 特に咳の症状が強い時期には、合剤を使うことにより咳が速やかに改善します。治療を開始した当日、遅くとも数日中までには「とてもよく効いた」「眠れるようになった」と多くの患者さんがその効果を実感できます。
 

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アドエア

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シムビコート

繰り返しになりますが、
「長びく咳」 = 「咳喘息 または アトピー咳嗽」
では、ありません。

「ヒューヒュー」「ピーピー」という音のある咳や呼吸音がある場合、さらに呼吸苦も伴っている場合には、急いで小児科や内科を受診することをお勧めいたします。

また、見逃してはいけない肺疾患(結核や肺炎、百日咳、腫瘍など)がないかの確認のために、小児科や内科の先生に肺を診察していただくことも重要です。

3週間未満の短期間の咳はもちろん、3週間以上の長びく咳でお困りの場合にも、当院にお気軽にご相談ください。
 

 

インフルエンザ予防接種のお知らせです

こんにちは。
たくゆう耳鼻咽喉科クリニックの黒田です。
 
最近は少しずつ暑さも和らぎ、過ごしやすい気温になってきました。
小さな子供さんに流行していた「手足口病」や「ヘルパンギーナ」の患者さんも、ほとんどいなくなりました。
 
今回は、インフルエンザ感染症についてお話しをしたいと思います。
「まだ9月になったばかりで、インフルエンザの話なんて早過ぎない!?」
と思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、こちらを読んでいただけると、そろそろ準備が必要なことがお分かりいただけると思います。
それでは、始めたいと思います。
 
 
【インフルエンザウイルスの型とは】
「インフルエンザ」の病原体は、インフルエンザウイルスというRNAウイルスです(ヒブ予防接種の「インフルエンザ菌」とは異なります)。インフルエンザウイルスには、内部のタンパク質の種類によってA型、B型、C型の3種類の「属」に分類され、症状が強くて世界的な大流行を起こす原因になることで有名なのが、A型です。
 
A型インフルエンザは、ほぼ球形のウイルス表面に、HA、NAという2種類の糖たんぱく質が突き出ていて、ウイルスの表面がトゲに覆われたような形をしています。この2種類の糖たんぱくには亜型があり、HAが16種類、NAが9種類知られています。その組み合わせでインフルエンザの「型」が名づけられています。例えば、ソ連型H1N1型、香港型H3N2型、新型鳥インフルエンザH5N1型、などです。理論上は、16種類×9種類の計144種類が考えられますが、流行することで知られているのがこの3種類です。

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インフルエンザワクチンが開発されたばかりの頃は、ウイルスを薬液(ホルマリンなど)で処理して毒性を弱めてそのまま注射する「全粒子型ワクチン」でした。よく効くワクチンでしたが、発熱や注射した場所が赤くなり大きく腫れ上がる、ギランバレー症候群などの重篤な副作用も強かったようです。その後1970年代になり、薬液(エーテルなど)でウイルスをバラバラの断片に分解したものを注射する「スプリットワクチン」が開発され、現在も季節性インフルエンザのワクチンは「スプリットワクチン」が使われることがほとんどです。このワクチンは、「全粒子型ワクチン」に見られた大きな副作用が発生する頻度が少なく、安全性が高いのですが、バラバラになったウイルスでは十分な免疫力がつかずに効果が不十分となることも多いようです。
 
予防接種では、数種類のインフルエンザを不活化したスプリットワクチンを使用しますが、その年にどのインフルエンザワクチン株を使用するのかは、厚生労働省健康局の依頼に応じて国立感染症研究所が検討し、これに基づいて厚生労働省が決定しています。以下の通り、ほぼ毎年、予防接種のインフルエンザ株が変わっています。
 
平成20年度(2008/09シーズン)
   A/ブリスべン/59/2007(H1N1)
   A/ウルグアイ/716/2007(H3N2)
   B/フロリダ/4/2006 

平成21年度(2009/10シーズン)
   A/ブリスベン/59/2007(H1N1)
   A/ウルグアイ/716/2007(H3N2)
   B/ブリスベン/60/2008
 
平成22年度(2010/11シーズン)
   A/カリフォルニア/7/2009(H1N1)pdm
   A/ビクトリア/210/2009(H3N2)
   B/ブリスベン/60/2008 (ビクトリア系統)
 
平成23年度(2011/12シーズン)
   A/カリフォルニア/7/2009(H1N1)pdm09
   A/ビクトリア/210/2009(H3N2)
   B/ブリスベン/60/2008(ビクトリア系統)
 
平成24年度(2012/13シーズン)
   A/カリフォルニア/7/2009(H1N1)pdm09
   A/ビクトリア/361/2011 (H3N2)
   B/ウイスコンシン/1/2010(山形系統)
 
そして今年、平成25年度(2013/14シーズン)
   A/カリフォルニア/7/2009(H1N1)pdm09
   A/テキサス/50/2012 (H3N2) img_1
   B/マサチュセッツ/2/2012 img_1

の予定です。

 この組み合わせは、毎年厚生労働省が流行予測を行って5~6月に公布され、各製薬メーカーは7月にはその発表と全く同じ組み合わせのワクチンを製造し始めます。ですから、ワクチンメーカーによって効果が異なることはありませんし、接種する医療機関によって効果に差が出ることもありません(「○○病院の予防接種は効くけれど、△△クリニックのは効かない」というようなことは起こりえません)。

 厚生労働省の発表はあくまで予想ですので、実際に流行するインフルエンザ型が異なる場合があります。今回のワクチン株の選定に至る経緯は、下記の厚生労働省の資料をご参照ください。
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000033079-att/2r985200000330dw.pdf
(厚生労働省のHPより)
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【接種の年齢と回数】
インフルエンザワクチンの接種量と回数が、平成23年度(2011/12シーズン)から変更されました。

(1) 6か月以上3歳未満  1回0.25ml 2回接種
(2) 3歳以上13歳未満   1回0.5ml 2回接種
(3) 13歳以上         1回0.5ml 1回または2回接種
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※ 生後0~6ヵ月まではワクチンを接種しても抗体の上がりが悪く、有効性が確認されていないため、ワクチン接種の対象となっていません(接種希望があっても接種できません)
※ 1回目の接種時に12歳で2回目の接種時に13歳になっていた場合でも、12歳として考えて2回目の接種を受けてかまいません。
※ 2回接種する場合は、腕の腫れを減らすため、左右交互に打つことが勧められています。
 
 尚、日本で使用されているワクチンの特徴で、インフルエンザに一度も罹患したことのない人への効果は、一度でも罹患したことのある人への効果より低いと言われています(医学的には、「プライミング効果が低く、ブースター効果が高い」と言います)。ですから、小さなお子さんのいる家庭では、お子さんへの接種効果に期待するよりも、周囲の家族(ご両親や兄弟)が予防接種を受けることで、家族内で感染を起こさないようにする方が重要なのかもしれません。
 
 
【ワクチンの効果が出る期間】
 インフルエンザワクチンは接種後2週目から抗体が上昇し始めて1ヵ月でピークに達し、その効果は約5ヵ月間持続します。2回接種が必要な場合、1回目の接種で抗体がピークに達している1か月後に追加接種した場合に最も抗体が上昇しますので、2回目の接種はこの頃に受けるのがよいでしょう(一般的には、接種間隔は2~4週とされています)。以下は当院として推奨するワクチン接種時期の例です。どんなに遅くとも12月上旬までには最後の接種を済ませておくことをお勧めいたします。
 
(2回接種の例)
 1回目 10月下旬~11月上旬
       ↓(4週後)
 2回目 11月下旬~12月上旬

(1回接種の例)
 1回目  10月下旬~12月上旬
 
 
 ワクチン接種後の効果の持続期間ですが、一般的には、2回の接種後1か月で77%が有効予防水準に達し、接種後3ヶ月で有効抗体水準は約78..8%と維持されていますが、接種後5ヶ月では約50.8%まで減少すると言われています。
 つまり、11月上旬に最後の接種をした方は、2月上旬までは約80%、4月上旬までは50%の抗体が維持されます。これが12月上旬ですと、3月上旬までは80%、5月上旬までは50%、ということになります。
 この通り、実際に流行したウイルスと、前述の予測されたワクチンに含まれているウイルスの抗原型が一致した場合には、約3ヶ月間は高いレベルで効果が続きます。さらに、以前にインフルエンザに罹患したことがあって基礎免疫を持っている場合は、有効な抗体水準は3ヶ月を過ぎても維持されますが(前述の「ブースター効果が高い」ということです)、インフルエンザ罹患歴がなく基礎免疫がない場合には、効果の持続期間が1ヶ月ほど短くなるといわれています(前述の「プライミング効果が低い」という話です)。
 (インフルエンザワクチン, ワクチンハンドブック, 130-141(1994)より)
 
 
【他の予防接種との接種間隔】
不活化ワクチン及びトキソイド接種を受けた場合は、6日以上の間隔をあけて、
生ワクチン接種を受けた場合は、ウイルスの干渉を防ぐために27日以上の間隔をあけて、
次のワクチンを接種することが推奨されています。
(予防接種ガイドライン2013より)
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 安全性を確保するために、インフルエンザ予防接種の前に受けたワクチンをご確認ください。
 
 【不活化ワクチン】  ⇒ インフルエンザ予防接種は6日以上あける
インフルエンザ菌b型(Hib)、肺炎球菌、インフルエンザ、DPT-IPV、DPT、DT、ジフテリア、
破傷風、ポリオ、日本脳炎、A型肝炎、B型肝炎、狂犬病、子宮頸がん
 
 【生ワクチン】 ⇒ インフルエンザ予防接種は27日以上あける
MR、麻疹、風疹、BCG、おたふくかぜ、水痘、ロタウイルス、黄熱
 
 
【妊娠中・授乳中の接種】
 妊娠中の接種に関する安全性は確立していないので、妊婦または妊娠している可能性のある場合には、予防接種の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ接種すること、となっています。予防接種後の胎児の先天異常の発生率は、接種を受けていない自然発生率より高くなることは無いという報告もありますが、妊娠中の投与に関する安全性は確立しておらず、動物実験では薬剤の胎盤通過性が報告されています。よって、万が一の危険性を心配される方は、接種を控えたほうが良いと思われます。妊娠中の方は、通院中の産科担当医にご相談されることをお勧めいたします。「接種は問題が無い」、と言われた妊婦さんのワクチン接種については、当院でもご相談いただけます。
 
 一方、授乳期間中は、インフルエンザワクチンを接種しても支障はありません。インフルエンザワクチンは不活化ワクチンというタイプで、ウイルスの病原性を無くしたウイルスの成分を用いているため、ウイルスが体内で増えることが無く、母乳を介してお子さんに影響を与えることはありません。
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 しかし、授乳期間中にインフルエンザに罹患した場合、授乳を続けながら抗インフルエンザ薬(タミフルなど)を使用することは出来ません。なので、授乳しながらでも受けられるワクチン接種による予防をお勧めいたします(以下をご参照ください)。
 
 ※授乳中のインフルエンザ治療
 授乳期間中にインフルエンザに罹患してしまった場合、母乳中にインフルエンザウイルスが含まれ、母乳を介して乳児に感染を起こすことはほとんど無いと考えられています。しかし、母親と乳児は日常から接触する機会が多く、母乳とは関係なく、咳などの飛沫感染によって乳児に感染する可能性が高いと思われます。
 そして、抗インフルエンザ薬(タミフルやリレンザなど)は母乳中に移行すると言われており、投与中に母乳を与えることは避けることとなっています。米国予防注射詰問委員会の勧告では、抗インフルエンザ治療薬について、「授乳中の婦人には投与しない」「投与する場合には授乳は避ける」とあります。
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【ワクチンに含まれる添加物について】
 ワクチンの中には、保存料として「チメロサール」という水銀化合物が添加されているものがあります。
 
 チメロサールが主な原因と考えられるアレルギーの報告例もあり、アメリカではワクチンの中のチメロサールをできるだけ早く低減または削減するとの方針が出され、ヨーロッパでも「使用上の注意」にチメロサールによる過敏症が起こる可能性がある旨を記載するという方針が出ました。
 
 これを受けて、日本国内でもチメロサールによる過敏症に関する注意を「重要な基本的注意」に追記しています。チメロサールを含むワクチンの接種により、過敏症(発熱、発疹、蕁麻疹、紅斑、痒み)が現れたとの報告があり、接種後は十分な注意が必要とされています。
 こちらには、チメロサールに関する非常に詳細な記載がありますので、興味のある方はご参照ください。
 http://www.city.yokohama.lg.jp/kenko/eiken/idsc/disease/thimerosal1.html
(横浜市衛生研究所のHPより)
 
 
【乳幼児ワクチン接種と脳症の関係】
 インフルエンザの後遺症として有名なのが、インフルエンザ脳症です。ワクチンによって、仮にインフルエンザに罹患してもインフルエンザ脳症まで発現しないようにすることができるかについての研究も行われています。
 
 平成16年に発表された「乳幼児(6歳未満)に対するインフルエンザワクチン接種について」-日本小児科学会見解- では、
 
「インフルエンザ脳症患者とインフルエンザ罹患者の間でワクチン接種率に有意な差はなく、インフルエンザ脳症の阻止という点でのインフルエンザワクチンの有効性は低いと考えられる。しかし、インフルエンザ脳症はインフルエンザ罹患者に発症する疾患であるところから、インフルエンザ罹患の可能性を減じ、その結果として脳症発症の可能性のリスクを減じる可能性はあり、ワクチン接種の意義はあるものと考えられる。」

となっています。すなわち、インフルエンザワクチンを接種していたからと言っても、インフルエンザに罹患してしまうと脳症を生じる可能性はある、ということです。異常行動や異常発言、けいれんといった症状がある時には、早急に医療機関を受診することをお勧めいたします。
 
 インフルエンザ予防接種により脳症を防げないのであれば、予防接種は受けずに罹患した時に治療すればよい、という考えもあるかもしれませんが、私はそうは思いません。インフルエンザ脳症の原因のほとんどがA型でワクチンの効果が期待できること、インフルエンザ発病から脳症発症まで1日ちょっとしかないため、医療機関を受診して抗インフルエンザ薬を開始しても脳症に至ってしまう可能性があり、インフルエンザそのものの予防が重要であること(そもそもインフルエンザに罹患しなければ脳症にも罹患しません)、が理由です。
 
 インフルエンザ脳症に関連して、一時期は抗インフルエンザ薬「タミフル」が飛び降りなどの異常行動の原因と報道されたことがありましたが、「タミフル」で飛び降りなどの異常行動が出たのではないとの報告が多数あります。インフルエンザの予防接種と、発症時の早期治療こそが、脳症による事故を防ぐ方法であると、私は考えています。
 
 より詳しい解説については、以下の厚生労働省のHPもご参照ください(「タミフル」についてはQ12に解説があります)。
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou01/qa.html
 
 
 
【当クリニックの予防接種への対応予定】
 以上の事実を踏まえ、10月下旬までには予防接種開始ができるように準備を進めていく予定です。詳細については、お電話にて確認いただくことをお勧めいたします。
 
 使用するワクチンですが、「チメロサール」を含まないものは、1人の患者さんに使い切りの形をしており、1つの瓶に入ったワクチンを注射器で吸いとって複数の方で分け合うものに比べて、接種の安全性が高いと考えています。また、他の誰かと分け合うことの無い完全な使い切りですので、予約なしで来院していただいても全く問題がありません。しかし、安全性が高い一方で、薬剤の価格が高く、かつ非常に品薄で入手自体が困難という問題があり、どちらを採用するかをまさに検討中です。
 
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 詳細が決定しましたら、当院HPや院内に掲示させていただく予定です。インフルエンザ予防接種や、インフルエンザ感染症に関しては、ご遠慮なくお問い合わせください。
 
 

クリニックの案内カードのデザインが新しくなりました

こんにちは。
たくゆう耳鼻咽喉科クリニックの黒田です。


さて、当クリニックの待合室・中待合室・ネブライザーコーナーには、名刺サイズの案内カードが置いてあります。開院当初から自由にお持ち帰りいただいていたのですが、おかげさまで在庫も少なくなり、これを機会にデザインを一新することに致しました。
既に新しいデザインのものが院内各所に設置されていますが、WEB予約のQRコードを分かりやすくしたり、裏面の地図を大幅に変更したりしています。

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もし、手に取るお時間がありましたら、ご覧いただけると幸いです。以前のデザインのカードをお持ちの方も、ご遠慮なく新しいカードをお持ち帰りください。

安全と清潔に気をつけています

こんにちは。たくゆう耳鼻咽喉科クリニックの黒田です。
 
夏場に入り、アレルギー性鼻炎も落ち着き、中耳炎や副鼻腔炎で通院されていた方も症状が改善してきています。一時期の混雑も落ち着いて、午前中や午後の早い時間、半日診療の水曜日などは、比較的待ち時間も少なく診察を受けていただくことができます。
 
以下の通り院内に掲示をしておりますが、お盆休み期間中には御迷惑をお掛けいたしますが、宜しくお願い致します。8/19(月)からは、通常診療となります。
 
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さて、7月も下旬となり、当クリニックでは医療法・医療法施行規則に基づき、第1回医療安全対策研修、第1回院内感染対策研修を開催いたしました。皆さんがいつも使っていらっしゃる待合室の椅子とモニターを利用して、全ての職員が参加して2時間程度の研修となりました。
 
医療安全対策研修では、医療関係の各種法規を再確認するとともに、クリニックにおけるリスクマネージメントを学びました。患者さんが安心して診療を受けていただけるために、保守点検やスタッフミーティングを行っております。皆さんの目に見えない部分ではありますが、とても大事にしているところです。

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院内感染対策研修では、咳エチケットや、待合室各所・トイレ・患者さんの体に触れる医療機器の管理などについて勉強し直しました。当院では、診療終了後に毎日の定期清掃を欠かさず、ソファーや棚はこまめに消毒処置を行っています。キッズスペースのおもちゃも定期的に消毒と乾燥を行っていますので、お子さんにも安心して使用していただけるものと考えています。

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以下は当院の特徴とも言える点ですが、安全管理と感染対策の見地から考えたものです。その目的についてもご理解いただけますと幸いです。
 
・玄関は自動ドアですので、扉に取手はありません。車いすやベビーカーの方、ご高齢の方でも待合室に簡単に入ることができます。
・当院は土足制ですので、不快なスリッパへの履き替えも不要です。靴の履き間違えや紛失の可能性もありません。

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・トイレには、除菌型のハンドソープと使い捨ての紙タオルを設置しています(使いまわしの布タオルや、乾きにくいエアータオルは採用していません)。手洗いも自動水栓です。前の方が使用して濡れている蛇口に触れるようなことはなく、手をかざしていただければ手洗いができます。

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・院内各所には、手指消毒剤を設置しております。手指消毒薬のボトルに手が触れないよう、足元のペダルを踏んで、適宜ご使用ください

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・ごみ箱も、フタの無い物は中のゴミが見えて不快感を感じられるかと思います。かと言って、ゴミを捨てる際にフタを手で押し開けるのも感染対策の見地から好ましくありません。当院では各所にキックペダル方式のゴミ箱を設置していますので、ゴミ箱に手を触れることなくゴミを捨てていただけます。

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感染症の治療を行っているクリニック、小さなお子さんや御高齢のかたも通院されるクリニックですので、安全面・清潔面には常に気を付けております。
何かお気づきの点がございましたら、遠慮なくスタッフまでお申し付けください。
 
気温の上がってくるこの時期、皆様、体調管理にはくれぐれもお気をつけてください。

イネ科の花粉症の季節です

​こんにちは。
たくゆう耳鼻咽喉科クリニックの黒田です。

ゴールデンウイーク明けから始まったシラカバの花粉症が一段落して、鼻炎の患者さんは症状がようやくおさまった頃かと思います。
ところが、今度は次の花粉症のシーズンが始まります。

以下は「北海道立衛生研究所」のHPに掲載されている、イネ科花粉の飛散状況です。

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(北海道立衛生研究所のHPより)
http://www.iph.pref.hokkaido.jp/pollen/ine/ine.htm

以前、シラカバ花粉症のときにもお話ししましたが、苫小牧の花粉の飛散時期は、札幌に比べると若干のずれがありますが、ほぼ同様と思われます(気温が低いと飛散開始が遅くなります)。イネ科は、気温が20度を超えるようになると花粉を飛ばし始めるようです。

さて、イネ科の花粉症と言われても、ピンと来ない方もたくさんいらっしゃるかと思います。お米のイネではなく、イネ科の雑草の花粉症のことなのですが、代表的なものでは「カモガヤ」や「オオアワガエリ」などがあります。2つとも世界的に有名な牧草で、明治時代以降に家畜の餌として導入されたものが野生化したそうで、道路わき、河川敷、公園などに生育しています。スギやシラカバなどの樹木の花粉とは異なり、飛散距離が数十メートルと短いので、これらにあまり近づかないことで症状を抑えられます。
そう言われても、ほとんどの方は「どの草のこと?」という感じかと思いますので、以下の写真をご覧下さい(6/22に拓勇地区を散歩した時に撮影した物です)。写真はクリックすると拡大されます。

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ご近所でもよく見かける雑草かと思います。まるでイネや麦の様に見えませんか。少し近づいて見てみると.....

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まだ開花前の穂ですが、先端が赤紫色に染まってきています。

先端がかなり赤くなっている物もあります。

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そして穂が全体ににふくらんだ物もあります。

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(ピンぼけで申し訳ありません….)

こちらでは、一部開花しています。

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この辺りは、かなり咲いています。
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同じ穂の表と裏の写真です。

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こちらの穂は、花粉がびっしりで黄色みを帯びています。
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最後になりますが、こちらが「オオアワガエリ」です。よく見かけるのではないかと思います。
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今はまだ青々としていましたが、時期が来れば、穂が黄色から茶色い花粉で覆われていきます。

カモガヤは果物との共通抗原性があり(花粉症の原因物質と類似した物質が果物の中に含まれていると言われています)、特にメロンやスイカとの関連が有名です。メロンやスイカを食べると、唇・口・のどがイガイガしたり痒くなる方は、カモガヤのアレルギーがあるのかもしれません。
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花粉症や果物アレルギーは、血液検査などで調べることが出来ます。原因物質が分かればアレルギー症状が出ることを予防したり、症状がひどくなる前にお薬を使用することで症状を軽減する事が出来ます。

花粉症やアレルギーに関することは、ご遠慮無く、耳鼻咽喉科専門医にご相談下さい。

後鼻漏による咳とは?

たくゆう耳鼻咽喉科クリニックの黒田です。
本日は、よくある症状について、簡単にご説明したいと思います。
 
鼻の中で過剰に分泌された鼻水が、鼻の穴から出てくれば、それはいわゆる「鼻水が出る」ということになります。
しかし、中には「鼻水が前に出ないで、のどの方に垂れていく感じ」で困っている方がいます。
 
まずは下の図をご覧ください。
これは、人の顔の断面を図でお示しした物です。
お分かりいただけますでしょうか。

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健康な方
鼻水は、健康な人でも1日に2~6リットルが作られ、その約3割(0.6~2リットル)は鼻の後方からのどに流れ落ち、本人が知らないうちに無意識に飲み込んでいると言われています。これが後鼻漏(こうびろう)です。ですから、後鼻漏があること自体は病気ではありません。後鼻漏は、健康な方でも生じている生理的なものなのです。

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鼻炎の方
アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎などで、鼻内の鼻水が増えてくると、鼻のあなから鼻水が出て、さらには口蓋垂(のどちんこ)の後ろを回り込んで喉(のど)に落ちていく後鼻漏が普段よりも増えてきます。

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鼻炎の方が仰向けになると…
夜間に寝た状態になると、鼻水はさらに後鼻漏となって流れ落ちるようになります。後鼻漏が増えると、痰が詰まったような感じになります。しかし、実際には痰ではなく後鼻漏がのどに溜まっていることがあります。

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のどに溜まった後鼻漏は、粘り気を増し、また時には黄色味を帯びてくることもあります。睡眠中は、これらを吐き出さない限り、後鼻漏が溜まったままになります。眠ってしまうと、後鼻漏は気にならなくなることが多いようです。

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     朝になると…
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鼻炎をお持ちの方で、朝に起床後に痰の混じった咳が多いという方は、のどに溜まった後鼻漏を吐き出そうとして咳をしているのかもしれません。このような咳は、のどに付着した鼻水を外に吐き出すために大事な役割を持っているため、咳止めでこれを無理に抑え込み過ぎるのは、あまり良くないのかもしれません。
腸の中にたまった有害なものを出すために下痢をするのと同様に、のどに溜まった後鼻漏を出そうとして咳が出る場合には、これを抑え込みすぎては排出すべきものが十分に出てくれません。上記のように後鼻漏が原因の咳の場合には、咳止めを使うよりも、鼻炎の治療を優先したほうが良いと思われます。
また、鼻炎の程度が強い方は、テッィシュでかむ鼻水の量だけでなく、後鼻漏も増えて昼間の咳が出ることがあります。のどの病気ではないので、やはり原因となっている鼻炎の治療が最優先されます。
「ヒュー、ヒュー」と音のなるような咳や、呼吸苦を伴う咳は、気管支喘息などの可能性もあるので、内科や小児科の先生の診察を受けた方が良いです。しかし、鼻の調子が悪くて咳を伴っている場合には、耳鼻咽喉科専門医の診察を受けてみることもお勧めいたします。「鼻水は出ていないし、痰の出る咳なのに、なんで鼻炎薬を処方されるのだろう?」と疑問に思われる方、「後鼻漏による咳」も考えて一度診察を受けてみてはいかがでしょうか。
 

シラカバ花粉症の続報です。

こんにちは。
たくゆう耳鼻咽喉科クリニックの黒田です。
開院直後から、咳と声がれで大きな声が出せませんでしたが、ようやくのどの調子が良くなってきました。診察と受療環境整備に明け暮れていましたので、医者の不養生というわけではないのですが、開院準備と1日中声を出し続くていたせいで、ここ1か月ほどは小さなかすれ声しか出ない状態でした。
病状のご説明などの際には、小さな声で聞き取りづらく、ご迷惑をおかけしたかもしれません。本来の声に戻りつつありますので、今しばらくご辛抱いただけますでしょうか。
 
さて、前回はシラカバ花粉症による鼻炎についてご説明いたしました。
その後の札幌の飛散状況はどうなったのでしょう。
「北海道立衛生研究所」のHPに掲載されている、シラカバ花粉の飛散状況です。
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(北海道立衛生研究所のHPより)
http://www.iph.pref.hokkaido.jp/pollen/shirakaba/shirakaba.htm
(ブラウザはFirefoxを使用しています)
 
上記の通り、その後は一気に花粉の飛散が進んだことが分かります。
苫小牧は飛散状況の調査が行われていませんので詳細は不明ですが、気温差や例年の鼻炎患者さんの様子を考えると、札幌のデータのおよそ1週間遅れで苫小牧にもシラカバ花粉症がやってくる印象です。ですから、今が苫小牧のシラカバ花粉症のピークではないかと私は考えています。
ゴールデンウイーク前後から6月初めまでの鼻水、鼻づまり、くしゃみ。「鼻かぜではなく、シラカバ花粉症かも」と考えて、耳鼻咽喉科専門医へのご相談をお勧めいたします。

シラカバ花粉症の季節です

こんにちは。
たくゆう耳鼻咽喉科クリニックの黒田です。
おかげさまで、開院から1か月がたちました。
 
さて、最近は「季節の変わり目で鼻風邪をひいたのではないかと思う」とのことで来院される方が増えております。
果たして、皆さん本当に鼻風邪なのでしょうか。
 
下の図をご覧ください。
「北海道立衛生研究所」のHPに掲載されている、シラカバ花粉の飛散状況です。
 

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(北海道立衛生研究所のHPより)
http://www.iph.pref.hokkaido.jp/pollen/shirakaba/shirakaba.htm
 
今年のシラカバ花粉の飛散状況がHP上で更新されています。Internet ExplorerとFirefoxでは、表示内容が異なることがあるようです(上記はFirefoxの画像です)。
 
例年、道央地区ではゴールデンウイーク頃にシラカンバの花粉が大量に飛散するために、アレルギー性鼻炎を発症される方がたくさんいらっしゃいます。
今年は春先の気温が低く、例年に比べて飛散開始時期が遅かったのですが、札幌でもようやくシラカバ花粉が飛散し始めたようです。
昨年の今頃は飛散が収束していたのですが、今年はこれからピークを迎えます。苫小牧の飛散時期は、札幌に比べると若干のずれがありますが、ほぼ同様と思われます(気温が低いと飛散開始が遅くなります)。
 
さて、例年との比較ですが、今年は去年と比べてシラカバ花粉は沢山飛ぶのでしょうか?
その答えが以下の図に示されています。
本州では春のスギ花粉症が有名ですが、北海道では道南の一部を除けば、スギ花粉症自体は稀です。その代わり、北海道ではシラカンバ花粉症が有名です。
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「日本気象協会」HPより
http://www.jwa.or.jp/content/view/full/4902/
 
北海道だけが、スギ花粉情報ではなくシラカバ花粉情報となっているのも、上記の理由からです。
今年2013年の飛散量は、昨年2012年と比較して「非常に多い」となっています。が、ここ数年と比べると「例年並み」となっています。
これはどういうことでしょう?
同じページよりの抜粋ですが、北海道のシラカバ花粉の飛散量は、例年比では110%とほぼ同じですが、昨年比では880%(!)と予想されています。
昨年の飛散量が極端に少なかったために、このような数字になっていると思われます(昨年が極端に少なかったわけです)。

地方 花粉
種別
飛散
開始時期
飛散量 2012年夏の気象
例年比(地方平均値) 前年比(地方平均値)
北海道 シラカバ 4月下旬 やや多い(110%) 非常に多い(880%) 気温:高い
日照時間:平年並
降水量:少ない


昨年の春にはほとんど鼻炎の無かった方でも、今年はシラカバ花粉症に気をつけた方が良いかもしれません。

この時期に鼻炎症状のある方は、耳鼻咽喉科専門医にご相談下さい。